コト消費と営業

昨日とある飲み会で、営業について語った時ふと自分の営業に対する考え方のターニングポイントとなった経験を語り、涙腺が緩んだと言うより、思い出しながら泣いた

昔私はウィッグメーカーの札幌営業所長としてマネジメントはもちろん、小さな企業故営業活動にも必死に動いていた。メーカー→卸→美容ディーラー→美容室→消費者という商流で、本来ならば殆ど一般の販売現場である美容室には出向く事はあまり無いはずだったが、水物(シャンプーやカラー剤)に比べ端物の扱いで結局販売現場に近いところまで営業活動を行う必要があった。

ちょうど「医療用ウィッグ」を新商品として販売し始め、全道の美容室を行脚し、販売に関する技術的、心理的販売手法をレクチャーして廻った。当然、顧客対応に不慣れな美容室へは実際の顧客対応に同席し、アドバイスも行った。

おしゃれ用ウィッグの場合でも『変身願望』というコト消費について意識はしていたが、医療用ウィッグの販売では・・・

ある日、抗がん剤治療を受け、脱毛が進んだガン患者へのウィッグを販売サポート(実演)した美容室の代表からお電話があった。「先日対応して頂いた女性が、急逝されて、ご本人・ご遺族、

そして私からも貴方にお礼を言いたい、そのメッセージをお伝えしますね」と。

「私が末期のガン患者である事は十分承知しているのに、全然お構い無しに大笑いしながら楽しく変身させてくれ、久し振りに大笑いました。そして私は女性として旅立ちたい。だからウィッグを付けたまま荼毘にふして欲しい。そして、あの方に是非連絡を取ってお礼を伝えておいて欲しい」と。電話口から聞こえる震えた声を聞いている最中から涙が溢れ、やがて号泣してしまった。日頃サイボーグのように営業の鬼として行動していた男のこの姿に事務所内は変な雰囲気に包まれた。

電話を切った後、ひとしきり泣き終え、部下に伝えた。「もう数字を必死に追いかけることは止めだ!事務所の営業方針を変える!」と同時に事務の女性に黄色のマグネット(ニコちゃんマークをマッジックで描いて)を多数用意するように頼んだ。「これからは 幾ら販売する ではなく、どれだけ楽しませるか笑顔にするのか?で営業目標を設定し、実際に「お祭りのように爆笑営業を全道で進める!」と宣言し、「このマグネットを積み上げていくぞ!」と

結果、数字を追いかけていた時より遥かに数字は伸び、ニコちゃんマークが積み上がった。

今、営業や経営をサポートする事を職にしているが、その土台に気付かせてくれたあの女性と業界にお礼を言いたい。